猫とボク。
「良いにきまってるじゃん」
 ボクの即答に、タマの動きがぴたりととまった。
「にゃ?」
 一体何をタマは言ってるんだろうねぇ。
 猫の恋人が出来たからって、追い出すようなことするはず無いのにね。
「何をそんなに心配してるのさ」
「猫社会に戻った子は要らない、って言われるんじゃないかと思って」
 ちょっとちょっと。
 どこからそんな発想が生まれてくるわけ!?

 「だってさ、オレらはいつも不安なわけよ」
 ふんふん?
「今は可愛がってくれるけど、大きくなって捨てられたらどうしよう」
「あー……」
「恋人紹介して引き離されたらどうしよう」
「ああ……」
「ある日突然、皆がいなくなったらどうしよう。帰って来るなって言われたらどうしよう」
 そりゃオレらは一人で生きていけるけどさ、と、タマは床をじっとみる。
「オレたちの言い分、普通の人間には通じないだろ? オレたちの言葉が通じたらいいのにって、オレたちも思ってるんだよ」

 ぽつりぽつり、と、語るタマ。
 時折ボクの顔を見上げて、様子を窺うようにして。
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