猫とボク。
 こんなに大事にしてるのに。
 タマたちには、あまり伝わっていなかったようで。

 たまたま拾ってくれた。
 なんとなく、飼ってくれてる。
 粗相をしたら、すぐに追い出される。
 人間に気に入られるように……。

 そんな風に思っていたんだそうだ。

 ボクはなんだか哀しくて。
 タマの体をぎゅっと抱きしめた。
「ジジと、仲良くしたって追い出したりしないよ」
「勝手なことをする猫は、不都合じゃない?」
「全然!」
 むしろ。
 勝手なことをしないタマは、タマらしくない、とでも言いましょうか。
「お互いに、気持ちよく暮らすためのルールさえ守ればいいんだよぉ」
「にゃあ……」

 グルグルと喉を鳴らしたタマが。
 ボクの頬っぺたや鼻先をペロペロ舐めてくれた。
「アゲハ、大好きー」
「あはっ」
 可愛いなぁ、と思っていた矢先に。
―ペロリン、ガブッ!

 やっぱりね……。
 ああ、痛い。
 頬っぺたに、牙のあとがついちゃったじゃないか、タマ!
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