猫とボク。
 タマのゲージを抱えた母さんと、お弁当を持った父さんが二人並んで。
 その後ろにボクとタテハが続く。
 タマは恨めしそうにゲージの中から、恨み辛みを並べ立てている。
「ぶにゃー」
「はいはい」
「にゃーにゃー、にゃーにゃーにゃーにゃー!」
「はいはい」
「にゃぎーっ!」
 適当に相槌を打っていたら、急にタテハがボクの肘を掴んで立ち止まった。
「ね、タマが文句言ってるのはさ」
「ん?」
「彼女が一緒じゃないからだよね、きっと」
 
 うーん、すごいなぁ。
 当たってるよ、半分……。

 「人間だって彼氏と一緒に行きたいんだよ、猫だって恋人と一緒がいいよねぇ」
 はぁ、そんな理屈ですか。
「それに、なんか、黒猫呼んで来い、って言ってる気がする」
 そ、そうですか……。
「さ、行くよ」
 へ? どこへ?
「決まってるでしょ、タマカノ捕まえに!」
「ええー?」

 唖然とするボクの腕を引っ張って、タテハは来た路を引き返す。
「タマー、まってろよー!」
 タテハの叫びに、タマが盛大に答えた。
「(にゃご、にゃぁーん!)タテハ、大好きだーっ!」
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