猫とボク。
 しかし、自由気ままな猫をいきなり捕まえるのはそう簡単なことではなくて。
「おーい、タマカノや~い」
「タテハ、そんな呼び名で出てくるわけないデショ……」
 公園の木の上、植え込みの中。
 近所の屋根の上に、自転車置き場のバイクの下。
 タマがよく通る場所をメインに、探してみたけどみつからない。
「うーん、餌もナシで捕まえるのは、難しいかもね。うちのタマならともかく」
「そうね……。よし、あたし取ってくるわ。あ、タマには内緒ね」

 タテハが、タマのキャットフードを取りに家に入った瞬間。
 ボクは公園の茂みでのんびりしている猫たちに話しかけた。
「ねぇっ! 三丁目のハチゴロウ、どこにいるか知らない?」
「ハチゴロウ? ああ、ステファン探して鳴いてたぞい」
「どっ、どこで?」
 でっぷりとしたトラネコが、前足でぴっ、と指し示した先は。
「あっ、あそこぉ!?」
「そうだぜ。ちなみに、わしはもうそこへいけなくなって久しいぞい」

 そうでしょうとも。
 そんなに太ってしまっては……藤棚に上るのは至難の業でしょう。
「ボクだって、藤棚に登ったのは、幼稚園のときだよ……」
 なるほど藤棚の隅っこに、蹲った黒い影がある。
 うーん。
 どうやって捕獲したらいいんだろ?
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