猫とボク。
 藤棚を見上げて唸っていたら。
 キャットフードを持ったタテハが大急ぎでやってきた。
「タマカノ、見つかった?」
 ボクが、ぴっ、と藤棚を指すと、タテハは、あちゃー、と頭を掻いた。
「そっか、猫って高いところ好きなんだよね」
 みたいだね。
「タマカノちゃん、お食事ですよ~」
 黒い影の下へ行って、餌を振ってみる。
 が、チラリとこちらを見たきり、動く気配はなくて。
「にゃご(スネとるのう)」
「にゃおう(その飯、寄越せ)」
「んみぃ……(可愛そうに)」
 足元で猫たちが大合唱。

 「うるさいわねっ」
 キレたタテハが、口封じとばかりに、ドライフードを一山置いた。
「アンタたちっ、食べたらあの子降ろすの手伝いなさい!」
 タテハの要求に猫たちは揃ってこう応じた。
「気が向いたらね」

 色よい返事ではないことを察したタテハは。
 徐に上着を脱ぎ、下ろしていた髪を一つに束ねると。
「えいっ!」
 掛け声勇ましく、藤棚にしがみ付いた。

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