君は僕を好きになる。


「拗ねないでよ。いいじゃない。誰にでも得意不得意はあるもの」


そう言って耳に髪をかけながら、また日誌を書き始める平岡さん。


今日は巻かれている髪がフワフワと揺れる。


「平岡さんにも不得意なことってあるの?」

「うん、結構あるかも」

「たとえば?」

「うーん……そうね」


顔をあげて、うーん、と悩む彼女は普通の女の子。

昨日の今日ですっかり平岡さんの近寄り難いイメージはなくなった。


ただ、この人は恐ろしく正直者らしく思ったことをすぐ口に出す癖があるから怖い。


「私、料理できないよ」

「え、そうなんだ」

「もっと言うと家庭的なこと全般苦手かも」

「何か、意外だね」

「女の子っぽいのやるの向いてないんだよ。きっと。だから…、」


その続きを紡いだ言葉は彼女らしくもあり、昨日の彼女の言葉を思い出させるものだった。


「だから、恋も不器用なんだと思う」


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