としサバ
 社会の教科書を出し、何となくカバンの中を見詰めていて、ある物が無くなっている事に、雫は気が付いた。


 「あっ、携帯が無くなっている」


 朝来た時、携帯電話の電源を切ったのを、雫ははっきりと覚えていた。

 「もしかして」

 雫はチラッと葵を見た。

 葵はいつものように、みちるとリンと楽しそうに話し合っている。


 前後の席に座っている子に、自分の席に誰か来たか、と雫が尋ねると、何も知らないという答えが返って来た。

 雫は少し離れた所に座っている吉田麻理に、同じ事を聞いてみた。


 「そう言えば、葵たち3人が雫の席の周りに立っていたかな。私もあの人たち、何をしているのかな、と不思議に思っていたの」

 「やっぱり」

 雫の睨んだ通りだった。


 「まいったな。何でも有りなんだから」


 雫は行動する時が来たと思った。



 

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