としサバ
 自分の席で待っていると、午後の授業の開始とともに遠藤先生が現れた。


 「今からカバンの中を検査します。皆は起立して、カバンの中の物を机の上に置いて下さい。あっ、触らないで」

 遠藤先生が厳しい顔付きで。

 皆は起立して、神妙な顔付きで立っている。


 遠藤先生は前から順に、生徒ひとりずつの持ち物をざっと見て回った。


 葵の所に遠藤先生が来た。
 葵は慌てていた。


 雫の携帯を授業が終わってから、隠すつもりでいたのに、いきなり遠藤先生が持ち物を検査し始めたからだ。


 葵の前に来ると、遠藤先生は立ち止まった。
 葵の机の上には、携帯が二つある。


 「宮崎さん、携帯の電源を入れてもらえるかしら」
 「二つ共ですか」

 「ええ、そうよ」


 遠藤先生はあらかじめ持ち歩いていた自分の携帯から、雫の電話番号を素早く掛けてみた。




 

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