としサバ
 雫は兄の歩に声を掛けた。

 「お兄ちゃん、部屋に入ってもいい」
 「いいよ」

 雫がチョコレートを片手に、歩の部屋に入った。

 「チョコレート食べない」
 「ありがとう」

 「お兄ちゃんは、関東と関西では、どちらが好き?」
 「関東は好きだよ」

 「やっぱり」
 「でも、関西も嫌いじゃない」

 「うそー。じゃ、どちらか好きな方を、ひとつだけを上げるとしたら」

 「関東、いや関西。やっぱり両方かな」
 「ズルイわ。ひとつだけと言ったのに」

 「じゃ、雫は」
 「もち関東よ。お兄ちゃんは、関西のどこがいいの」

 「関西の方が、何でも美味しいからね。お好み焼きだろ。たこ焼きだろ。うどんだって、断然関西の方がおいしいよ」

 「お兄ちゃんの食いしん坊」
 「雫、何かイヤな事があったの」

 「・・・実は、そうなの。学校でイヤな事があったの。お兄ちゃん、聞いてくれる」

 「雫がムキになる時は、決まって何かある。思った通りだったよ。でも、いいよ」

 「実はね。同じ組の男子生徒が、間違ってお姉さんのパンツをはいてしまったの。体育の授業の前にはき替えていたら、それが皆に見つかったと言う訳」
 「へえ」

 「そしたら、もう大変。皆が寄って集って、彼を冷やかすの。私、最初それを黙って見ていたのだけど、だんだんと見てられなくなったの」

 雫が歩に例の出来事を説明した。





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