としサバ
 広ちゃんは後片付けをしている。

 「広ちゃん、後片付けが終わったら、暖簾を下ろしてくれる」
 「はい、分かりました」

 広ちゃんが暖簾を下ろし、食器を洗い出した。

 「ありがとう。それが終わったら、帰っていいわよ」
 「はーい」

 広ちゃんは片付けが終わると、帰り支度をし始めた。

 「女将さん、失礼します」
 「広ちゃん、お疲れ様。気を付けて帰ってね」

 「さよなら」

 女将は玄関口で広ちゃんを見送ると、格子戸の鍵を閉め、手前の照明を消した。

 「今日は二人で飲みましょうよ」
 「女将と飲めるなんて、今日はついているな」

 「私だって、飲みたい時はあるのよ」
 「何かあったの」

 「最近、疲れてね。いつまでこの仕事をやれるか、よく考えるようになったわ」

 そう言いながら、女将も冷を飲んだ。


 「おいしい。お酒って、親友みたいね」
 「親友か。そうかもしれないな」


 「そうよ。裏切らないし、いつだって、私を慰めてくれるわ。冷えた心を優しく温めてくれるのは、唯一の親友よ」


 二人は取りとめの無い話を肴にして、二人で4合位の酒を飲んだ。



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