としサバ
 ピンクと青の朝顔の模様が入った女物の浴衣で、信彦は少し気恥ずかしい思いを味わっていた。


 信彦がベッドに入ると、女将の香りがプーンとした。


 女将は短めにシャワーを済ませた。

 女将がバスタオルを巻いてベッドに行くと、信彦が背を向けて寝ていた。

 中に滑り込むと、すすり泣く声が聞こえた。


 「深ちゃん、どうしたの。気分でも悪くなったの」
 「・・・」


 「ねえ、どうしたの」



 「駄目なんだ」



 「何が駄目なの」
 「肝心なものが駄目なんだ」


 信彦は女将に背を向けたまま、泣いていた。


 



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