としサバ
 「二人で寝て大丈夫か」

 「大丈夫よ。深ちゃんが60キロ位で、私が50キロ足らずでしょう。110キロ位の人は幾らでもいるわ」


 信彦は女将と向かい合わせに寝た。

 目が数秒間、合った。


 「嬉しい。深ちゃんと寝られるなんて幸せよ」

 「誰にでもそんな事、言っているんだろ」

 「意地悪ね」

 そう言って女将は信彦の手を抓った。


 「深ちゃんだけよ。私、深ちゃんと先日、一緒に寝てから、あの安らぎが忘れられないの」

 「精神安定剤って訳か。どうせ、僕は良く眠れ、精神を安定させる薬みたいな男だよ」

 「それが、良く効くのよ」
 「喜んでいいのやら」

 「喜んでよ。だって、私、女王様気分で眠れるのよ」

 「女王様気分?」

 「ええ、まるで、何十人もの衛兵に守られているようで、安らかに安らかに眠れるの。最高でしょう」


 そう言い終わると、女将は寝息を立てて、安らかな顔をして眠り出した。




 
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