としサバ
 雫は家族宛の遺書を書き終えた。

 「ごめんなさい」

 心の中で、雫が呟いた。

 大粒の涙が一粒、ポトンと落ちた。

 雫は大急ぎで、いま書いた遺書を机の引き出しの中に片付けた。

 ティシュで涙と鼻を拭き去ると、気分を取り直し、もう一通の遺書に取り掛かった。




 砂浜小学校へ

 わたしがなぜ自殺をするのかわかりますか。それは、死を持ってだんこ、学校側にこうぎをするためです。わたしと吉岡君があのひれつないじめから、どれだけ苦しみをうけていたか、先生方は想像できますか。


 もし、できないとしたら、私はくやしくてなりません。吉岡君がお姉さんのパンツをはきまちがえたからと言って、よってたかって冷やかすのは、いじめではないのですか。


 吉岡君を姉パンツと呼び、それを止めたわたしを死神と呼んで、二人のもぎ結婚式まであげるのは、二人に対するぶじょくではないのですか。


 これだけのことをしておいて、ただ注意するだけですませていいのでしょうか。


 注意をされたあとも、男子生徒たちは、吉岡君の頭の毛をめちゃめちゃにかり、いやがせをし続けました。だから、吉岡君は、頭を丸ぼうずにしたのです。これは、処分に問題があったからではないのですか。


 けいたいやデジカメで証拠まではっきりと提出しているのに、この処分では、みじめすぎてなりません。


 あまりにくやしいので、わたしは砂浜小学校の先生がたに、この命を持ってこうぎをします。


               今野 雫




 
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