としサバ
 水割りを飲むと、独身時代、信彦の前に付き合っていたボーイフレンドと、水割りを飲んだ楽しい思い出が、果穂の脳裏に蘇って来た。


 「あの人、今頃どうしているかな」


 果穂はグラスの中の氷を人差し指で混ぜてみた。
 水割りをボーイフレンドと飲んでいた頃の果穂の癖だった。


 「独身時代は楽しかったな」


 グラスの中の氷を取り出し、果穂はガリガリと噛んでみた。

 冷たくて、おいしかった。


 「もう一度、青春してみますか」


 果穂は後ろを振り返らず、前を見て一歩踏み出そうと思った。




 
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