としサバ
34話 離婚話
 信彦は茨木の自宅に向かっていた。
 妻の果穂から呼び出しを受けていたのだ。

 阪急茨木駅から自宅までの通い慣れた道のりが、今日の信彦には事のほか遠くに感じられた。
 
 やっとの思いで自宅に着いた。

 「俺だ」

 インターフォンを押すと、妻の声が帰って来た。

 「鍵を開けているので、入って」
 「わかった」


 自宅の鍵を持っているはずなのにチャイムを押す自分が、いつしか他人行儀になっている事に、信彦は気が付いた。


 「元気だったか」
 「お陰様で、元気よ」

 「それは良かった」

 「コーヒーでも入れるから、座って待ってらっして」
 「わかった」


 信彦は応接用のソファーに座った。
 果穂がコーヒーを入れて、テーブルに置いた。



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