としサバ
 信彦はひと口飲んだ。そして、今日のコーヒーをいつもより苦いと感じていた。

 「あなた、あの人と結婚をするつもりなの」

 果穂がコーヒーを飲みながら口を開いた。

 「俺とあの人とはそんな仲じゃないよ」
 「じゃ、どんな仲なの」


 「お前は信じられないかもわからないけど、男と女の仲じゃ無いんだ。お前に疑われるような事は、何もやってはいない。ただ、酒を飲んだりする友達なんだ」


 信彦は、沙穂が言っていたような苦しい言い訳をした。

 果穂は呆れながら信彦を逃がさないように、言葉を選んで語り始めた。


 「あなたの言う事は信じて上げてもいいわ。だからと言って、何もやっていないとは言わせないわよ。確かに、肉体は裏切ってないかも知れない。しかし、心は裏切ったじゃないの。飲み屋の30代の女将と、60歳の男が、二度も泊まっておいて、ただの友達なんて。小学生じゃあるまいし、笑わせないでよ。同性以上の感情は無いとあなた言えるの」


 信彦は言い訳が出来なかった。




 
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