としサバ
 窓を開けると、さわやかな風が入って来た。
 
 運動場ではトレーニング姿に着替えた生徒たちが、思い思いの練習をしていた。

 クラスの生徒たちが、ひとり、またひとりと、帰り始めている。

 掃除当番が机を動かし始めた。

 教室に残っているのは、掃除当番を含めて、8名位になっていた。


 雫は窓の下を見た。

 はしごのような金の枠が庇の所にまで、2本付いている。
 それを見ながら、雫は先日の事柄を思い起こしていた。


 それは、こんな出来事だった。
 雫は放課後、掃除当番で窓を拭いていた時の事である。



 突然、窓に小父さんの顔が現れた。
 雫はびっくりした。

 驚いて、雫が目をパチクリとしていると、小父さんは長い棒の付いたモップのようなもので、熱心に窓を拭いていた。

 目が雫と合うと、小父さんはニコッと笑ってくれた。
 雫は目で小父さんをずっと追っていた。


 すると、掃除の終わった小父さんは、教室の中に入って来た。

 雫が窓の下を覘くと、2本の金の枠が見えた。
 雫は小父さんに言った。


 「怖くないの」

 「怖くないよ。でも、絶対に真似をしたら駄目だよ」


 そう言って、小父さんは教室の外へ出て行った。




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