としサバ
いつもと変わらないように振舞う事は出来ないのか。
一人ひとり後で挨拶するつもりなので、それまでそっと出来ないものか。
信彦は、定年を迎える者の気持ちを察しない若い部下に、少し苛立ちを覚えた。
総務部で退職金などの確認や手続きを済ませてから、上司、各部署の責任者、同期の桜、宣伝部の皆へと挨拶廻りだ。
どこを廻っても、型通りの贈る言葉が返ってきた。
午後3時過ぎに、宣伝課長の青山が自分の机の横にダンボールの箱を並べ始めた。
「青山君、それは何かね」
「あ、次長、どうも済みません。明日からここが僕の席なもので、置かせてもらいます。ここなら邪魔にはならないでしょう」
顔を覗くと、ウキウキしている。
その笑みをみていると、信彦は怒りが込み上げて来た。
「き、貴様!人の定年がそんなに嬉しいのか。お前にもすぐその時が来る。少しは人の気持ちを考えろ」
思わずこう怒鳴りつけ襟首を鷲づかみにしたい衝動に駆られたが、信彦は必死でその言葉と、気持ちを抑えた。そして、足早にトイレに駆け込んだ。
後ろから青山の声が追っ掛けて来た。
「次長、ぼ、僕、何か気に障る事しました。もしそうだったら、許して下さい」
信彦はトイレのドアを荒々しく閉めた。
一人ひとり後で挨拶するつもりなので、それまでそっと出来ないものか。
信彦は、定年を迎える者の気持ちを察しない若い部下に、少し苛立ちを覚えた。
総務部で退職金などの確認や手続きを済ませてから、上司、各部署の責任者、同期の桜、宣伝部の皆へと挨拶廻りだ。
どこを廻っても、型通りの贈る言葉が返ってきた。
午後3時過ぎに、宣伝課長の青山が自分の机の横にダンボールの箱を並べ始めた。
「青山君、それは何かね」
「あ、次長、どうも済みません。明日からここが僕の席なもので、置かせてもらいます。ここなら邪魔にはならないでしょう」
顔を覗くと、ウキウキしている。
その笑みをみていると、信彦は怒りが込み上げて来た。
「き、貴様!人の定年がそんなに嬉しいのか。お前にもすぐその時が来る。少しは人の気持ちを考えろ」
思わずこう怒鳴りつけ襟首を鷲づかみにしたい衝動に駆られたが、信彦は必死でその言葉と、気持ちを抑えた。そして、足早にトイレに駆け込んだ。
後ろから青山の声が追っ掛けて来た。
「次長、ぼ、僕、何か気に障る事しました。もしそうだったら、許して下さい」
信彦はトイレのドアを荒々しく閉めた。