としサバ
 タクシーが自宅の前の道路に止まると、マンションの入り口付近にも、報道陣が押し寄せていた。

 二人は報道陣から逃げるようにして、マンションの入り口から中に小走りで入った。


 「すごいね」
 「これじゃ、買い物にも行けやしないわ」

 「2、3日の辛抱よ。すぐに、いなくなるわ」
 「そうね」

 「ご免ね。ママ」

 「雫が謝らなくてもいいのよ。ママは雫の命が助かって、それだけで感謝しているのよ。もしもの事があったらと思うと、考えただけでもぞーとするわ」


 雫はカーテン越しに表にたむろする報道陣を見ると、振り返ってテレビの前に行った。
 リモコンでテレビのスイッチを入れる。



 
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