としサバ
 ジャー。


 トイレの水を流し、便座の中に顔を突っ込んだ。

 怒りの余り気分が悪くなり、身体がぶるぶる震えている。


 ゲーゲー。

 
 戻したいのに何もでない。



 「畜生!」
 「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって・・・」



 得体の知れない大きな怒りのために、信彦はしばらくの間立ち上がれなかった。

 ジャージャー。
 
 ジャージャー。

 何度も何度も水を流した。

 便座の奥を流れる水を眺めていると、少しずつ、少しずつ、怒りが流れて行くのがわかった。

 顔を水で洗ってから、信彦は何もなかったような顔をして、また席に戻った。


 退社時間になった。

 宣伝部の全員が集合。
 別れの為の最後の儀式が始まる。





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