としサバ
 「これ、今野さんが書いた家族宛の遺書です。お母さんにお渡しします」

 校長先生が紙袋の中から家族宛の遺書を取り出し、緑に手渡した。


 遺書は警察から校長先生に渡され、家族に渡すよう依頼されたものだった。


 「もう一通の遺書はどうしたのですか」


 雫が小さな声で囁いた。


 「あれは、読ませてもらったよ。今野さんの気持ちは良く分かったよ。学校側の対応については、今野さんの気持ちを真摯に受け止めて、市教委とも相談の上、もう一度、じっくり検討するつもりです」


 「よろしくお願いします」

 
 雫は少しだけ頭を下げた。


 二人はそれから、頭を何度も下げては、謝罪の言葉を述べていた。
 二人は立ち上がった。


 「この度は、本当に多大の心痛をお掛けして、誠に申し訳ありませんでした。心より深くお詫び致します」


 校長先生と教頭先生は、頭を深々と下げると帰って行った。




 
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