としサバ
 緑は二人が帰ると、封筒の中から家族宛の遺書を取り出した。


 パパ
 ママ    へ
 お兄ちゃん

 今まで家族のひとりとして、かわいがってもらって、ほんとうにありがとう。
 雫は今野の家に生まれてきて、心からよかったと思っているよ。
 こんどうまれかわったとしても、やっぱり今野雫がいいな。


 パパのこと 
 大好きでとっても尊敬しているよ。
 家族のために一生けんめいに働いてくれて、感謝しているよ。
 わたしが大きくなったら、パパみたいな人と結婚するのが夢だったの。
 ほんとうよ。

 ママのこと 
 やさしくて、わたしのあこがれだったわ。
 もっと、ママから料理を習いたかったな。
 肉じゃががマスターできなかったのが心のこりよ。
 花がいっぱい咲いているところへ、今から、行ってきまーす。
 ママ、泣かないでね。

 お兄ちゃんのこと 
 わたしのりそうのタイプは、はずかしいけどお兄ちゃんだったの。
 信じられないでしょう。
 いつも話し相手になってくれて、ありがとう。
 ほんとうに感謝しているよ。
 では、永遠にグッドバイ。

 わたしなりの考えがあって、死ぬことに決めました。
 わがままを言ってごめんなさい。
 長い間、ほんとうにお世話になりました。

 ありがとう。
 大好きなパパ、ママ、お兄ちゃん、さようなら。                   

 雫


 緑は涙を流しながら遺書を読み終えた。


 「雫が生きていて、本当に良かった。死んでからこの遺書を読まなければならなかった、って考えると、もう私・・・」


 そう言って、緑はハンカチで涙を拭いた。

 雫は母親の涙を見て、生きていて良かった、といま始めて実感した。
















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