としサバ
 すると、別の女子社員が飛び出して来て、負けない位大声で泣き出した。


 「わあん、わあん。うっうっうっ。次長、辞めないで・・・」


 「次長がいたので、今の自分があるというのに・・・。なぜ、次長が辞めなければいけないの」

 連鎖反応でも起こしたのか、あちらからも、こちらからも、女子社員が出て来た。そして、涙、涙、涙の合唱に加わり始めた。

 信彦は沙紀にハンカチを渡した。
 廻りで女子社員たちが、信彦のハンカチで涙を拭いている。


 「ありがとう」
 「ありがとう」


 信彦は廻りの女子社員たちに軽く会釈をした。

 「本当に、ありがとう」

 沙紀の目から、大粒の涙が零れ落ちた。


 「香田君・・・あ、あり、が・・・」


 信彦の目からも、大粒の涙が一筋流れ落ちた。
 後は、言葉にはならない。





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