としサバ
 「どかんかい。ひき殺すぞ」



 「あほんだら」



 あちらからも、こちらからも、怒鳴り声が上がった。
 信彦はふらつきながら、なおも車道を歩いた。



 酔っているせいか、車にひき殺されるという恐怖心は、不思議な位なかった。

 車道の中央辺りまでたどり着くと、立ち止まり、信彦は大の字になって道路に寝転んだ。



 「ブブー」



 「ブ、ブブー」




 (ひき殺せるものなら、殺してみろ)


 信彦は空を見上げた。

 スモッグに犯された、薄汚れた空が横たわっている。
 信彦はじっと空を見詰めた。

 数少ない星がキラリと光った。



 星を見詰める信彦の目にも、またひとつ星がキラリと輝いた。






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