としサバ
 信彦が気が付くと朝だった。

 昨日の事は、2軒目の店で飲んでいる時までは、はっきりと覚えている。が、その後は、信彦は全く記憶になかった。


 (なぜ、自分は、御堂筋の脇の舗道に寝ているのだろうか)


 記憶を辿るのだが、何も思い出せない。

 まだ、頭がボーとしている。
 

 信彦はゆっくりと立ち上がった。
 左右を見渡すと、新地と土佐堀川の中間辺りに位置している。


 信彦は内ポケットに手を入れた。


 「無い。そんな馬鹿な」


 背広のポケットをくまなく調べてみたが、やはりお金は無い。

 恐らく、誰かに抜き取られたのだろう。
 幸い、携帯電話は、ポケットに入っていた。


 「諦めるか。携帯だけでもあったのだから」



 「それにしても、何か臭い」



 信彦は上着の下を見て唖然とした。




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