としサバ
 「突然、何よ」

 「優しい人みたいだから」
 「恋人いるだろうなって」
 「ふっと思ったんだ」

 「変な人・・・」
 「恋人?」
 「いたらこんな所に来ないわよ」
 「そういうキリマンはいるの?」

 「いないよ」

 「欲しくないの」

 「もち、欲しいよ」
 「女狐さんみたいな優しい人が」

 「女狐さんって、白けるよね」
 「メッキーと呼んでくれない」
 「女優で言えばどんな人がいいの」


 「うーんと・・・しいて言えば」
 「宮沢みえかな」


 「お茶のCMに出ていた、あの宮沢みえか」
 「私の勘だけど・・・」
 「武家の妻みたいな人が好きじゃない」

 「まあ、そうかな」


 「優しくって、男の人には従順で」
 「それでいて芯が強い」
 「言わば、古風な女の人よね」


 信彦は宮沢みえと言っただけで、自分の好みのタイプを大体言い当てる女狐を、勘の鋭い女だと思った。






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