としサバ
 保はズボンのポケットからハンカチを取り出すと、傘マークと名前を消し出した。


 「噂のカップル、ついに登場」


 男子生徒から野次が上がった。


 「やっぱ、熱愛中」

 「アチチチチー、妬けるやんけ」


 男子生徒たちは,尚もふざけている。
 雫は男子生徒を睨み付けた。

 「今言ったのだあれ。立ちなさいよ」
 
 男子生徒を見渡すと、皆自分じゃないと言わんばかりに、首を左右に振っている。

 「言いたいことがあるのだったら、私の顔を見て言いなさいよ」

 雫の迫力に怖気付いたのか、男子生徒たちは大人しくなった。


 雫と保は、落書きをすべて消し終わると、自分の席に戻った。

 それから暫くして、担任の遠藤先生が教室に入って来た。


 1時間目の授業は国語だった。

 何も無かったかのように授業が進んで行った。

 黒板には傘マークの消し忘れが、少しだけ残っていた。






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