としサバ
8話 就職
 信彦は先日の失態を思い出すと、今でも自分が情け無く思えた。

 小便にビショビショに濡らしたズボンを穿いた哀れな男が、迎えの車を待っている。

 あの時、ホテルに迎えに来た妻の顔にも、大きな失望と落胆の表情が窺えた。
 
 あれ以来、妻の果穂とは、ぎくしゃくした関係が続いていた。


 あくる日から、信彦は真剣に就職を探し始めた。

 ハローワーク、そして、新聞、求人チラシ、就職情報誌・・・。
 信彦は管理人にマトを絞って、仕事を探す事にした。



 管理員募集。



 この見出しを見つけ次第、信彦は履歴書に写真を貼って応募した。
 1件目は書類選考で不合格。
 2件目も書類選考で不合格。
 3件目、4件目、5件目、6件目、7件目、8件目、9件目、10件目も、何とすべて書類選考で不合格。


 信彦はこの事実が信じられなく、受け入れ難かった。

 気を取り直して、信彦は履歴書の入った11件目の封筒をポストに投函した。

 1週間ほどして応募した会社から、面接日の知らせが来た。

 その日は晴れ。

 面接時間は2時15分。

 信彦は梅田で昼食を済ませた。そして、少し時間を潰してから、地下鉄肥後橋駅のすぐ近くにある、就職先の近畿建物管理に向かった。





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