としサバ
 雫は放課後、吉岡保を甲子園浜海浜公園に呼び出した。

 海岸に降りる石段に座って保を待っていると、保が走って来た。


 「今野さん、何か用事?」


 「そんな所に突っ立っていないで、ここに座らない。ここは、海が見えて気持ちがいいわよ」

 「うん」

 保も雫の横に座った。


 遠くで、ウインドサーフィンが蝶のように羽を広げ、海の上をゆらゆらと漂っている。


 「こんな所を誰かに見られたら、また皆に何を言われるかわからないよ」

 「大丈夫よ。少しの時間なら。実はね。先日の落書きだけど、私またあると思うの」


 「僕も同じだよ。また、絶対にやると思う」
 「それで、私考えたの。吉岡君、デジカメは持っているの」

 「持っているけど。どうして」
 「動画も映せるの」

 「もちろん、映せるよ」

 「そのデジカメを学校に持って来ることは出来る」
 「出来るけど」

 「今度、あの人たちが落書きを書いたら、私は黒板の前に行って、それを携帯で写真に撮るわ」


 「えっ、写真に撮るの」


 保があっと驚いた。






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