としサバ
 「ジャッキー」


 ピョロロロン。


 シャターの切れる音がした。


 「ありがとう。君、いま何と言ったの」
 「ジャッキー」

 
 雫はゆっくりと言った。

 
 「ジャッキーか。ごめんごめん。写真どうもありがとう」
 「いいっトラ」


 そう言うと、雫は立ち去った。


 「ジャッキーか。メッキーに聞こえるなんて、どうかしているよ」


 信彦は先ほど撮った携帯の写真を確認した。


 「それにしても可愛い子だな」


 それからも、信彦は辛抱強く待ち続けた。


 時計は、2時30分を少し過ぎている。
 ついに、メッキーは現れなかった。


 雫はジャガースファンの前で相変わらずポーズを作り、愛嬌を振りまいている。


 「メッキー!」


 ざわめきの中で、雫の甲高い声が響き渡った。





< 96 / 285 >

この作品をシェア

pagetop