Secret Prince[短篇]
「ゆう?」
「…あー、卑怯だよな、お前って。」
ベッドから勢い良く起き上がり、
裕二はそう呟いて部屋を出て行った。
あら…
これは許してくれたのかしら?
ほわんっと
その光景を見て、私もベッドから起き上がる。
「あ、お風呂…」
昨日そのまま寝てしまったため
お風呂にも入っていない始末。
私はバスタオルを持って裕二の後を追った。
「梨華、パンでもいい?」
「え、うん!」
手際よく準備をするのは裕二。
なんなんだ?
機嫌はもう良いの?淡々と朝食の準備をする有事の手に光る指輪。私とおそろいのシルバーの指輪。
「ふふっ」
あぁ、
もう本当に夫婦なんだ…
ぎゅっと腕の中にあるバスタオルを抱きしめ、嬉しさのあまり表情が緩んでしまった。
「あ、風呂?」
「あ、うん!先に入っても良い?」
「…良いけど。」
何かを考えるように少し黙った裕二は、頷きながら一旦止めた手をまた動かし始めた。