Secret Prince[短篇]
「…だろ。分かったならさっさと鞄渡せ。」
私の代わりに裕二が口を開く。
「え、いやさ…?」
健だって、風邪でフラフラな私を心配してくれただけだしさ……
「いいよ、梨華。……ほらよ。」
またまた私ではなく裕二に鞄が渡る。
………何!?
健と裕二の睨み合い。
最初に反らしたのは、健だった。
「…ま、俺は帰るわ。」
「う、うん、ありがと」
私を見て、少し微笑むとと健は私に背を向けた。
「じゃあな、早く元気になれよ。梨華。」
「分かってるよっ」
そう答えた瞬間、私の手をとる裕二。
「だから一人にさせるのは、心配なんだっつーの」
耳元で聞こえた、小さな声に、心臓が跳ねた。
「…さっさと帰るぞ。」
「う、うん!」