オベロンの赤い花
パチンっ
 
小枝を踏んだ音がした
 
「誰?」
 
不思議な生き物は聞いてきます。
 
「あ、あの…」
 
不思議な生き物に見つめられた彼女は言葉が止まりました。
 
「こんにちは、ペセディア姫。」
 
「私のこと・・・知ってるの?」
 
「えぇ、この国のお姫様ですから」
 
「あなた、名前は?」
 
「オベロンです。」
 
「じゃあ、あなたが森の妖精王?」
 
「いいえ、ボクはまだ子どもですから」
 
「さなぎになって、羽化するまで妖精王になれないんですよ」
 
羽化?
 
「年は?」
 
「姫と同じです」
 
カラーン…カラーン…カラーン…
 
遠くのほうで鐘の音が聞こえます。
 
姫の顔がこわばった。
 
「どうかされましたか?」
 
「この鐘の音はね。お別れの音だから嫌い。ちっとも迎えに来てくれないんだもん。」
 
ペセディアは不満げに言いました。
 
「パパもママも私の前からいなくなっちゃうんだよ?」
 
オベロンはにっこりと微笑むとペセディアに言いました。
 
「姫?これは、僕からのプレゼントです。」
 
そう彼女に言うと1輪の花を取り出しました。
 
「これって。」
 
彼が取り出したのはオベロンノ花です。
 
「あなたに祝福が訪れますようにって祈りを込めて…ね?」
 
「…ありがと。」
 
ペセディアは花の匂いをかぎました。
 
「いい匂い。」
 
オベロンはペセディアに語りかけます。
 
「ペセディア様、王様のこと王妃様のこと…好きですか?」
 
「うん!」
 
「大丈夫。もう一ヶ月もしないうちにでちゃんと来てくれますから。」
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