オベロンの赤い花
―11年後―
 
ペセディアはそれはそれは美しいお姫様となっていたのだそうです。
 
彼女のそばにはいつもやわらかな風が吹き
小鳥たちはいつも歌と、お花を運んでくれていました。

お姫様は小鳥たちと歌います。
その歌はやわらかな風が教えてくれた平和な愛の歌。
 
幸せという名の空気が彼女を包みます。

その姿に周囲はうっとり
そんな彼女ももうお年頃
彼女の父である王様はお姫様に言います。

「そろそろ、いい国の王子様と。」

しかし、いつもお姫様は首を縦には振りませんでした。

「わたくしは自分の目でみて、このお人だという方を決めたいのです。」

そう言って、王様の前を立ち去ります。
ある日、お姫様はいつものように城の花畑にいると白い大きな馬を連れた若い馬方に出会いました。

お姫様は教育係や王様以外の人とはあまり話す機会がありません。

そのため、興味シンシンです。

「なにをしてらっしゃるの?」

ペセディアは聞きます。
 
すると返ってくるのはステキな笑顔とともにお姫様の知らない世界でした。
 
それから、毎日お姫様は若い馬方の下へ通いつめます。
 
かわりに、お姫様は歌を教えます。
 
かつて森で教わった歌を。
風が運んでくるやさしい歌を。

お姫様はだんだん馬方に引かれてゆきました。
 
そしていつしか二人は恋を語らう仲になって行ったのです。
 
そんなとき、いつものように
ペセディアは王様に呼び出されました。
 
いつもの小言の時間です。
 
しかし今日は、いつもとは違いました。
 
「この方ならどうだ?」
 
その視線の先には
あの馬方がいたのです。
 
しかし、いつもの馬方の格好ではありませんでした。
 
馬方とは仮の姿、彼の本当の正体は
近隣国の英雄である王子様だったのです。
彼は数々の悪い妖精の国を滅ぼした最高の剣士だと言われていました。
 
お姫様の返事はもちろん…。
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