白亜の蕾
まずは握手から
男の人って生き物が、私には全然わからない。
「だいたい千穂(ちほ)はさ、恋愛に関して慎重すぎなんだよ」
駅近くの飲み屋街とは逆方向の裏通りにある、知る人ぞ知るBar・Chartres(シャルトル)。
淡い照明がセピアのカウンターテーブルや床の木目に反射して独特の古めかしさを醸し出す店内で。
ピンク色のカクテルが入ったグラスを軽く回しながらそう言ったのは、同期の佐倉愛花(さくら・まなか)だ。
「…そんなことないと思うけど」
「そんなことあるから言ってんの!」
ぐっとグラスを傾けて空にした愛花は顔色ひとつ変わっていない美しい顔で私に向き直る。
羨ましいほどにはっきりとした目鼻立ちに、胸までの黒髪が淡い照明の下では匂い立つ色気に変換されている。
手に持て余しているグラスに目を落とすと、情けなく眉を下げ私が小さく揺らでいた。
「何も考えずに楽しめる恋愛なんて、高校生くらいまでだよ。
ハタチ越えたら結婚だって視野に入れざるを得なくなるし。
そうなってくると、年収だとかセックスの相性だとか、そういうものも大事になってくるでしょ」
社会人2年目の私達。
中学や高校の同級生の中にだって結婚した子もちらほらいる。
嫌でも意識し始める、『結婚』の二文字。
でも。
「キスまで1年?セックスまで5年?
そんなこと言ってたら、後には寂しい老後が待ってるだけね」
私はどうしても、男の人とそういう身体の関係になるのに時間がかかる。
「だいたい千穂(ちほ)はさ、恋愛に関して慎重すぎなんだよ」
駅近くの飲み屋街とは逆方向の裏通りにある、知る人ぞ知るBar・Chartres(シャルトル)。
淡い照明がセピアのカウンターテーブルや床の木目に反射して独特の古めかしさを醸し出す店内で。
ピンク色のカクテルが入ったグラスを軽く回しながらそう言ったのは、同期の佐倉愛花(さくら・まなか)だ。
「…そんなことないと思うけど」
「そんなことあるから言ってんの!」
ぐっとグラスを傾けて空にした愛花は顔色ひとつ変わっていない美しい顔で私に向き直る。
羨ましいほどにはっきりとした目鼻立ちに、胸までの黒髪が淡い照明の下では匂い立つ色気に変換されている。
手に持て余しているグラスに目を落とすと、情けなく眉を下げ私が小さく揺らでいた。
「何も考えずに楽しめる恋愛なんて、高校生くらいまでだよ。
ハタチ越えたら結婚だって視野に入れざるを得なくなるし。
そうなってくると、年収だとかセックスの相性だとか、そういうものも大事になってくるでしょ」
社会人2年目の私達。
中学や高校の同級生の中にだって結婚した子もちらほらいる。
嫌でも意識し始める、『結婚』の二文字。
でも。
「キスまで1年?セックスまで5年?
そんなこと言ってたら、後には寂しい老後が待ってるだけね」
私はどうしても、男の人とそういう身体の関係になるのに時間がかかる。