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日花梨先輩の手は静かに震えていた。

あたしの肩を抑えながらそっとしがみついているようにも感じられる。

 「…負ける気がしないです。
  そのためにここまでやってきたんだ
  から。」

 「それでいい。
  勝ちに行くよ、愛華!!」

 「はいっ!!」

今までやってきたことを思い出す。

去年の新人戦で負けてからのあたし。

合同合宿で大庭さん達に再会したこと。

…あのときの一本乱打は忘れられない。

大庭さんに勝つためにココに立っていると言っても過言じゃない。

…ラケットを持つ右手が震えている。

武者震いするなんて初めてだ。

ジュニア時代に出場したときは武者震いなんてしなかった。

それだけこの試合は意味を成すんだろう。

勝つことだけが全てじゃない。

今までずっとそう思っていた。
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