enjoying!
拳
手のひら
梨々香ちゃんとネットを挟んで立っている。
また目が合った。
あたしは…今でも初めて目が合った瞬間を覚えている。
忘れられるわけがない。
あんなに緊迫した瞬間は始めて味わった気がする。
それだけインパクトがあったんだ。
背中に走るゾクゾクする感覚も一段と強くなった。
「ねぇ、覚えてる?
小5のときの全国大会。」
「…え?」
梨々香ちゃんはトスのあとそう切り出した。
「私、愛華ちゃんに負けたんだよ。
それでもっと強くなろうって思
った。
覚えてなくて当然だけどね。」
「…ゴメン。」
そうだったんだ…。
梨々香ちゃんが大きな溜め息をついた。
「いいの。
…でも、借りを返す日がきたなっ
て。」