You
「えー、次はー、藤峰ー、藤峰ー。」


車掌さんがそう呼び掛ける声がして、私は鞄の持ち手に手をかける。

速度を落とし始めると少しずつ重みがのしかかる。
重さをやり過ごそうと手すりによりかかると思ったより冷たくて、首筋がぴくりと震えた。

少し前からあった電車のタイヤが出す音が低くなっていく。
空気が抜けるようなプシューという音がして、圧力の増加を伴って電車は止まった。


「藤峰ー。藤峰ー。
お降りの際は、足下にお気をつけください。」


同じ車両では私を含め二、三人が腰を上げ、電車から降りた。

五月の始めの強い太陽が肌を刺す。
弟に借りたキャップを深く被ると少し楽になった。

今頃には改札口に伯母が来ているはずだ。
高架になっている線路だから、この下に改札口があると、まあでも行けばわかるでしょと、眠たげに今朝母が言っていた。

階段を下る前にトートバックを担ぎ直す。
持ち手が肩に食い込んだ。


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