君を、僕は。
馨さんは、いつも、デレッとしている感じがする。春近さんも、それが少しあったけれど、馨さんは、常にそんな感じ。
触れるか触れないかのところまで顔を寄せて、首を傾げる馨さん。
絶対に馨さんは、わたしに触れない。
それは、まだわたしが10歳の頃、頭を撫でて下さった馨さんに、どうしていいかわからなくて泣き出してしまった。
あの時は、嫌だったのでなく、本当にどうしていいのかわからなかったの。
でも、それで、馨さんは決してと、触れてこなくなった。
だから、安心出来るのかもとも思う。
だから、馨さんに、お願い事が、出来る。
「お勉強、を、」
わたしは、馨さんを、見上げて、鞄を抱いて、控えめに声を出した。
馨さんは、そんなわたしに、すぐ笑って応えてくれる。
「ああ、またわからないところあった?」
「教えて、欲しいです」
「いいよいいよ、母さんも小春ちゃんに会いたがってるし、家おいでよ」
わたしは眉を下げて笑って、コクリ頷いた。
馨さんは、師範学校に行かれて、わたしにも、よくお勉強を教えて下さっていた。
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