君を、僕は。
「春近君春近君」
春近さんの膝の上でひとつめのてるてる坊主を完成させた時、廊下を歩いてくるお母様の声がした。
お母様は、わたしと春近さんを見るなり、あらあらと笑う。
けれどすぐに、春近さんの前に座って茶色の大きな封筒を廊下に置いた。
「あのひとに渡すよう言われてたの忘れかけてたわ、ごめんなさい。海軍兵学校の資料、だったかしら」
「ああ、わざわざすいません。ありがとうございます」
わたしはゆっくり春近さんから降りた。
そしてお母様を真っ直ぐ見る春近さんを見る。なんのお話しだろう。海軍兵学校?わたしは首を傾げた。
春近さんは、海軍さんになられるのだろうか。
そのための学校にいかれるのだろうか。
わからない。何も知らないけれど、少し不安になった。
けれど、春近さんは、穏やかに笑っていたから、わたしはそれを見るだけにした。
、