青薔薇に愛を込めて


「そう、本殿。隣国のスピリア…ええと、ヴェレーナ姫の故郷なんだけど、そこにあるんだ。あそこはもともと――」



ここからはこの世界の歴史。

正直、小難しい話が続いて耳がいたかったけど。



なんでも、今いる国――アルジェント王国というらしい――やスピリア王国、そしてスピリアを取り囲むように点在するいくつかの国は、もとは一つの帝国だったそうだ。

名前はスピリア帝国。

今のスピリア王国は帝国の首都周辺に当たるらしく、そのまま名前を継続したらしい。


地理的なことは分からないけれど、相当大きな国だった帝国は統治のために崇める神を一つに定めた。

それがこの神殿が祀っている神、"女神ピティエ"。

そして帝都にあたるスピリアにピティエの聖像を設置し、本殿を構えた。



また、絶対神であるピティエは人々の繁栄を導くため数百年に一度代神官を選ぶのだそうだ。

代神官は『神の代わり』という名の通り絶大な権力を手にできる。
時には帝国のトップ、皇帝を超えてしまうほど。

だからカーシム代神官は太っ腹だったんだ。納得。


ちなみに、四百年ほど前、色々と政治的なゴタゴタがあってアルジェントや他の数ヵ国は独立。

今でこそアルジェントの方が大国に成長したけれど、当時のスピリア帝国の勢いは凄まじかったらしい。



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