青薔薇に愛を込めて
神の采配、神の加護。
そのどれからも私はこぼれ落ちているらしい。
じゃあなんで私はこの世界に連れてこられたの?
ふつふつと沸き上がる怒りに任せて怒鳴ろうと口を開いたとき。
隣で黙りこみ成り行きを見守っていたリツィリアさんが私を制した。
「神の子、ミリテス様。どうかお聞きください。私たちは、渡人であるこの者の未来を知りたいのです。代神官がいない今、伝統にならうため神に最も親(ちかし)い貴方のお言葉を頂きたく、神官長をつかいお呼びしたのです」
丁寧な口調。
胸に手をあて方膝をつく姿はまるで物語の中の騎士のよう。
私は呆然とそれを眺めていた。
ローニャくん――否、ミリテスはリツィリアさんの存在に今やっと気付いたというように方眉を上げた。
「ほう、ぬしはアルジェントの王族……もしやセルリアの子か?」
「はい。セルリアは私の母でございます」
リツィリアさんの言葉に、ミリテスは懐かしげに目を細めた。