青薔薇に愛を込めて


リツィリアさんが、立ち尽くす私を心配そうに見上げる。


気にしないでという意味を込めて口の端をなんとか持ち上げた。

もしかしたら笑えてないかもしれないけど。



「セルリアの子よ。ぬしはその者をどうするつもりだ?」



ミリテスが言った。声音は冷たい。
そんなに私の存在が邪魔?

別に来たくてこの世界に来た訳じゃないのに。

…邪魔なら、私のことなんてほっといてくれないかな。

どうせ、私の意思なんて無視なんだ。いくらわめいたって、私の言葉が入り込む余地はないんだ。
だって私は異世界人、所詮、余所者だから。

ああもう、災いでもなんでもいいから、ほっといてよ。お願い。



ぽちゃん――…

水が跳ねる。
私は目を閉じた。






―――シャットアウト。



……何も聞きたくない。

柚子、おじいちゃん。
こんな人たちじゃなくて、私を愛してくれる人の声が聞きたいよ……







この時私は、自分の心に蓋をした。

これは、もう傷付かないための予防線。
この世界で息をするための唯一の解決策。



ああ、いつか、帰れますように……








< 119 / 125 >

この作品をシェア

pagetop