青薔薇に愛を込めて
リツィリアさんが、立ち尽くす私を心配そうに見上げる。
気にしないでという意味を込めて口の端をなんとか持ち上げた。
もしかしたら笑えてないかもしれないけど。
「セルリアの子よ。ぬしはその者をどうするつもりだ?」
ミリテスが言った。声音は冷たい。
そんなに私の存在が邪魔?
別に来たくてこの世界に来た訳じゃないのに。
…邪魔なら、私のことなんてほっといてくれないかな。
どうせ、私の意思なんて無視なんだ。いくらわめいたって、私の言葉が入り込む余地はないんだ。
だって私は異世界人、所詮、余所者だから。
ああもう、災いでもなんでもいいから、ほっといてよ。お願い。
ぽちゃん――…
水が跳ねる。
私は目を閉じた。
―――シャットアウト。
……何も聞きたくない。
柚子、おじいちゃん。
こんな人たちじゃなくて、私を愛してくれる人の声が聞きたいよ……
この時私は、自分の心に蓋をした。
これは、もう傷付かないための予防線。
この世界で息をするための唯一の解決策。
ああ、いつか、帰れますように……