青薔薇に愛を込めて
呆然と、手に握っている把手を見つめる。…暗すぎて見えてはいないけど。
どうしよう、こっちからじゃ開けられない……
言葉を失って、へたりと床に座り込んだ時だった。
こつ…
背後から聞こえた軽快な音。
聞き覚えのある…というかさっきまで聞いていた音だ。
そう、ピンヒールの足音…
私は耳を塞いで喚きたくなる恐怖をなんとか抑えて、ゆっくり後ろを振り返った。
「誰……?」
私の決死の問いかけに答える声はなかった。
でも、確かに聞いた。誰か…ヒールが鳴らす音を。
ここには誰もいないはずなのに。
聞き間違いだったんだと半ば祈りながら、でもやっぱり問いかけずにはいられなくて口を開きかけたその時。
こつ、こつ…こつ
やっぱり聞き間違いじゃなかった…なんて思う余裕はもう私にはなくて。