青薔薇に愛を込めて
不審者!
犯人が少年だと知って、さっきまでの恐怖よりも怒りが勝った。
彼の正体に粗方の検討をつけた私は、思いっきりその手に噛み付く。
「いたっ!おいっ」
「ぷはっ——誰かっ!誰か助けて!!」
とっさに少年が手を離した隙に、肺いっぱい吸い込んだ息で叫んだ。
けれど、少年は学習したのか次は顎と口を抑えられ声を上げるどころか噛み付くことさえ叶わなくなってしまう。
「んんんっ!」
「落ち着けって!何もしないから!」
信じられるかっ!
私は目をぎゅっと閉じて、必死にばたつく。
「頼むから、静かにしてくれ!」
声を潜めて懇願してくる彼。
でも不審者の頼みを素直に聞く人がいると思う?
私はとにかく暴れ続けた。