青薔薇に愛を込めて
「あ、待って。でも…」
取手が…と私が続ける前に、彼女は立ち上がって何の気なしに手を伸ばす。
がちゃ――
「ぇ、ええっ!?」
扉は開いた。というか、取手が復活していた。
しかも、さっきとは比べものにならないぐらい軽い音を鳴らして。
「嘘っ!」
とっさに自分の手の中や周りの床を見るけど、取手らしきものは見あたらない。
なにこれ、怪奇現象!?
「早く。ここだとすぐに見つかる」
座りながら奇声を発した私に手を差し出してくれた彼女を、ぱっと見上げた。
え、…この顔どこかで…
一瞬にしてスパークリングする思考回路。
悲しいことに、勉強の時よりも私の脳ミソはフルで稼働した。
けれど目の前の顔が誰に似ていたのか、気がついた瞬間。
「……ぎゃあぁぁああ―――!」
アメリカンな悲鳴を盛大にあげて私はひっくり返った。
嘘でしょ、なにこれ新手のドッキリ?
身体が後ろに傾いて、そんなことを考えながら私は意識を放棄した。