青薔薇に愛を込めて


「……明るい」



次に認識したのは、月が明るい夜だっていうしょうもないことで。



ああ、眠い…


とにかく眠かった。睡眠欲が私の頭の中を支配していた。



だんだんと下がってくる瞼に素直に従って、もう一度、目の前の細い首筋にこてんと頭をうずめる。



いい香り。

辺り一面にバラの濃厚な香りが漂っている。

私は鼻をすんすん鳴らしてみた。


とにかく甘くて頭がくらっときそうだけど、芳香剤みたいなふわりとしたとてもきめやかな香りだ。



なーんか、気持ちいなぁ…


とても穏やかな気分で微睡みかけていたら、聞き覚えのない声の持ち主が、焦ったように声をあげた。



「お、おい!寝るな!起きろ、起きろって」

「…ん~あと五分……」

「ちょ、マジで起きてくれって。頼むから!」



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