青薔薇に愛を込めて
柚子の家族――伊庭家や彼らを取り囲む人たちはみんな、少し…いやかなりズレている。
良く言えば個性的。悪く言えば変人揃いの巣窟だ。
例えば柚子と恋人の誠司さん。
一見、彼らは普通のカップル。でもあの二人の趣味に問題がある。
二人とも顔だけはいいもんだから、柚子は男を、誠司さんは女を手玉にとり、どれだけ貢がせたか競争するのが彼らの趣味。
…本当に極悪人みたい。
二人ともお互いに了承の上なのだから余計たちが悪い。
とまあ、こんな調子で他にも色々とやらかしまくっている家族なのだ。彼らは。
だから伊庭家主催のパーティに女装癖の少年がいても何も言うまい。
…なんて、私にはできっこない。
「…ぉおお男っ!?嘘でしょ?ねえ嘘だよね?」
私は叫んだ。そしてヴェルを揺すりまくった。
だって信じられない。なんでこんな可愛い美少女が男なの!?
なんで私よりドレスが似合ってるの!?
ヴェルは鬱陶しそうに目を細め、舌打ちをした。
「どうせ女顔だよ、俺は。それにしたくてこんな格好してんじゃない」