青薔薇に愛を込めて
├最低、最悪
――――……‥
今日は楽しくなるはずだったのに。
「うそでしょ…、圏外とかありえない……」
開いた白いケータイの画面左横。
アンテナがあるはずのそこには、見るだけで損した気分になる二文字。
圏外になるぐらい広い屋敷ってどうなの?
もうちょっと考えて家建てようよ。
私は待ち受け画面の中で笑っている三倍増しで美人な柚子を睨み付けた。
プリクラってホント詐欺だ。
柚子の隣でアホ面の私でさえそれなりに可愛く見える。
まあ、それは置いといて。
「ここどこ~」
うう、涙がでそう…
お城に着いたのはいいものの、私は見事に迷子になっていた。
柚子に連絡しようにもケータイは圏外で繋がらないし。
もう、最悪。
今いるのはお城の広い廊下で、窓からはさっきまでいた薔薇園が見える。
窓と反対側の壁には豪奢な扉がずらり。
微かに聞こえるのは、ホールで演奏されているクラシック。
それを頼りにここまで来たけど、全く辿り着く様子がない。