青薔薇に愛を込めて


彼が告げた言葉に、私はハッと我に返る。


そうだった、ヴェルは話せない設定だったんだ。

叫びそうになる口を空いている手で慌てて塞ぐ。


あ、あぶなかった…!



「ところで、貴女はどうしてこちらに?」



どうして?
あれ?どうしてだっけ?


あまりにも衝撃が大きすぎて頭からすっかり抜け落ちてしまった。

あれ、本当にどうしてだっけ!?


血の気がさーっと引いていく。

どうしよう、不審に思われたらバレる!



顔を蒼白にして彼の端正な顔を凝視する私に、彼は首をかしげる。



「もしかしてホールに行く途中?」



あ、そうそう!それそれ!


彼のおかげでなんとか目的を思い出した私は何度も頭を縦に振る。

あまりに必死だったからか、そんな私を見て彼は可笑しそうに顔を歪め、扉を後ろ手に閉めた。



「じゃあ僕も一緒に行こうかな」



ありがたい提案に、私は引き吊る頬をなんとか笑みに見せて、最後に一度こくりと頷く。


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